急に食べなくなった…それは“急性鬱滞”かもしれません。
こんにちは。すいれん動物病院の院長、新田です。
うさぎと暮らしている皆さまに、ぜひ知っていただきたい重大なテーマがあります。 それは「急性鬱滞(きゅうせいうったい)」です。
「昨夜まで元気だったのに、朝ごはんに口をつけない」「急に元気がなくなった」
もし、そんな様子が見られたら、すぐにうさぎの診察ができる動物病院へ。
これは、うさぎの命に関わる緊急事態かもしれません。
この記事では、急性鬱滞がどういうものか、どうして起きるのか、そして飼い主さんが絶対にやってはいけない対応や、正しい対処法まで、わかりやすくお伝えします。
うさぎの三大疾病とは?
うさぎには特に注意すべき三大疾病があります。
- 不正咬合(歯並びの異常)
- 子宮疾患(特にメスで発生率が高い)
- 消化管鬱滞(急変の可能性あり)
今回は、「消化管鬱滞」について詳しく解説します
鬱滞ってなに?
「鬱滞」とは、うさぎの胃や腸の動きが止まってしまう状態のことを言います。
人間や犬猫とは違って、うさぎの腸は常に食べ物を運び続けていないと、すぐに止まってしまうという特徴があります。特に牧草に含まれる繊維質が、腸を刺激して動かす重要な役割を果たしています。
鬱滞は病名ではなく、「食欲がなくなる」「便が出ない」「お腹が張る」など、さまざまな原因から生じる“症状のひとつ”です。
主な原因は?
鬱滞の原因は1つではなく、さまざまな要因が重なることで起こります。
- 牧草不足:ペレットや甘いおやつを好んで食べ、牧草をあまり食べなくなると腸の動きが鈍ります。
- ストレス:引っ越し、来客、掃除機の音など、些細なことでもストレスになります。
- 脱水:水を飲む量が減ると腸が乾き、動きが悪くなります。
- 痛み:歯のトラブルや膀胱の炎症など、痛みがあると食欲が落ち、腸の動きも落ちます。
- 毛の飲み込み:グルーミングで飲み込んだ毛が胃に溜まると、腸の動きに支障を来します。
- 異物の誤飲:段ボール、新聞紙などを食べてしまうと腸に詰まる可能性があります。
命に関わる「危険サイン」
以下のようなサインがあれば、すぐに動物病院へ!
- 食べ物に一切手をつけない
- 便が極端に少ない、または全く出ない
- お腹がパンパンに張っている
- うずくまって動かない
- 歯ぎしりしている(痛みのサイン)
- 耳だけでは判別しにくいが、体全体が冷たい(体温が下がっている)
これらの症状が複数みられる場合は、できるだけ早めに適切な治療を受けることが大切です。放置すると症状が進行し、深刻な状態になる可能性があります。
飼い主さんが絶対にやってはいけない3つの対応
緊急時に焦ってやってしまいがちな行動ですが、以下の3つは絶対に避けてください。
1. 様子を見る
「明日には元気になるかも」と思って待つのはNG。
うさぎの病気は進行が早く、様子を見ている間に手遅れになることがあります。
2. お腹のマッサージ
一見よさそうに思えますが、ガスや内容物で膨らんでいる胃や腸を無理にマッサージすると、臓器を傷つけてしまう恐れがあります。
3. 無理な給餌・給水
スポイトなどで水やご飯を無理に与えるのは、絶対にやめましょう。
うさぎは吐き戻すことができません。胃が詰まっている状態で無理に食べさせると、胃が破裂する危険もあります。また、誤って気道に入ると命に関わる誤嚥性肺炎の原因になります。
正しい初期対応は「すぐに動物病院へ連れていくこと」
ご自宅でできる対処は非常に限られています。
大切なのは、とにかくすぐに動物病院に連れていくこと。できれば、うさぎの診療に慣れた動物病院が理想です。
すいれん動物病院では、
- 点滴による水分補給
- 痛み止めの投与
- 腸の動きを促す薬
- 必要に応じたレントゲンや血液検査
などを行い、状態の安定化を目指します。
場合によっては、異物除去や手術が必要になることもあります。
鬱滞を予防するためにできること
再発を防ぐためにも、日々のケアがとても大切です。
- 生野菜を与えること:水分補給の一環として、日常的に新鮮な野菜を取り入れることは、健康維持に役立ちます。
- 牧草中心の食生活を心がけましょう(チモシーが基本)
- 新鮮な水をいつでも飲めるように
- ストレスの少ない生活環境を整える
- こまめなブラッシングで毛の飲み込みを防ぐ
- 日々の様子を観察し、小さな変化を見逃さない
まとめ
うさぎはとても繊細な動物です。 「なんか元気がないかも?」と思った時点で、すでに体内では異常が起きている可能性があります。
私たち動物病院は、早く気づいて連れてきてくれた飼い主さんと一緒に、うさぎの命を守るためのサポートをしています。
うさぎの急変に備えて、ぜひこの記事の内容を覚えておいてください。
そして、どんな小さなことでも「気になるな」と思ったら、どうぞ迷わず、すいれん動物病院までご相談ください。
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