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うさぎの「エンセファリトゾーン」ってどんな病気?

ウサギさんの飼い主さんにとって非常に重要な病気である「エンセファリトゾーン症」についてお話ししたいと思います。

突然、うさぎさんの首が傾いてしまったり、目がぐるぐる動いたり、うまく歩けなくなったりしたら、飼い主さんはとても心配になりますよね。

これらの症状の原因として、「エンセファリトゾーン症」、通称「エンセ」「Ez症」と呼ばれる病気が考えられます。

怖い名前ですが、正しい知識があれば、いざという時に落ち着いて対応できますよ。

エンセファリトゾーン症(エンセ)って、そもそも何?

エンセファリトゾーン症は、「エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi)」という、とっても小さな生き物によって引き起こされる病気です。

以前は寄生虫の仲間(原虫)だと思われていましたが、最近の研究で、実はカビの一種(真菌)に分類されると考えられています。

この小さな生き物は、ウサギさんの体の中の細胞に隠れて増えていきます。特に、脳や腎臓、そして目に感染しやすい性質を持っています。まるで植物の種(胞子)のような形で、ウサギさんの血の流れに乗って体中を移動すると考えられています。

どうやってうつるの?感染はとても一般的

驚かれるかもしれませんが、このエンセファリトゾーンは、日本のウサギさんの約60%が、過去に感染したことがあるか、あるいは今も体に持っていると言われています。アメリカやヨーロッパの調査では、さらに高い約80%という報告もあるほど、非常に一般的な存在なのです。

主な感染ルートは、**感染したウサギさんの「おしっこ」**に含まれる胞子を、他のウサギさんが口にしてしまうことです。多頭飼育の場合は、給水ボトルやトイレを介して感染が広がることもあります。

また、お母さんウサギさんが感染していると、お腹の中にいる赤ちゃんウサギさんに胎盤を通して感染してしまうことも多いです。これは防ぎようがない感染経路ですね。乾いたおしっこの胞子が空気中に舞い、それを吸い込んで感染する可能性も指摘されています。

このように感染が広がりやすいため、多くのウサギさんが幼い頃からすでに感染していると考えられています。

感染してもほとんどは「無症状」です

「うちの子も感染しているの!?」と心配になった飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。でも、大丈夫です。エンセファリトゾーンに感染していても、ほとんどのウサギさんは元気で、何も症状が出ないまま一生を過ごします。これを「キャリア」と呼びます。

なぜ症状が出てしまうの?それは「免疫力」が関係しています

では、どんな時に症状が出てしまうのでしょうか?エンセファリトゾーンは、普段はウサギさんの体の免疫力によって抑えられています。しかし、何らかの原因でウサギさんの免疫力が低下した時に、体の細胞の中で増殖を始め、症状を引き起こします。これを「日和見(ひよりみ)感染症」と呼びます。普段は悪さをしない菌やカビでも、体の抵抗力が落ちると問題を起こすことがある、ということですね。

免疫力が落ちるきっかけは様々です。

  • ストレス: 引っ越しや環境の変化、大きな音(雷や工事)、慣れない人や動物との接触など。ウサギさんはとても繊細な生き物なので、ちょっとしたことでもストレスになることがあります。ある報告では、環境変化があったウサギさんの約60%が3日以内に発症したというデータもあります。
  • 不適切な飼育環境: 暑すぎたり寒すぎたり、湿度が高すぎたりする環境。急激な温度変化(寒暖差)も良くありません。ケージが不衛生な状態もストレスや体力を奪います。
  • 偏った食事: 牧草を十分に食べず、ペレットやおやつに偏った食事は、胃腸の健康を損ない、体調不良の原因になります。
  • 他の病気: 隠れた持病(歯の問題やかかりやすい子宮の病気、腎臓病など)がある場合も、体力を消耗し免疫力が低下する原因となります。

どんな症状が出るの?首の傾きや目の動きが代表的

症状の約75%は神経に関するものと言われています。エンセファリトゾーンが脳など、バランスに関わる場所に影響を与えた時に症状が出ます。

  • 首の傾き(斜頸): 頭がどちらか一方に傾いたままになり、まっすぐ戻せなくなります。これが最も一般的な症状です。
  • 目の揺れ(眼振): 目が左右や上下に、早く行ったり来たりします。脳神経の問題で起こる症状です。
  • ぐるぐる回る(旋回運動): まっすぐ歩こうとしても、同じ方向にグルグルと回り続けてしまいます。
  • 転がってしまう(ローリング): 体のバランスが取れず、横に倒れてゴロゴロと転がり続けてしまいます。ひどい場合はケージなどにぶつかってケガをする危険もあります。ローリングは特にエンセファリトゾーン症でよく見られる症状と言われています。
  • 立てない・うまく歩けない: 平衡感覚を失い、ふらついたり、立ち上がりにくくなったりします。
  • 元気がない・食欲がない: 乗り物酔いのように気持ち悪くなって、ご飯を食べられなくなったり、元気がなくなったりすることもあります。
  • 麻痺や痙攣: 体の一部や後ろ足が麻痺したり、ひきつけ(痙攣)を起こしたりすることもあります。

また、脳以外の場所に感染して症状が出ることもあります。

  • 目の症状: 目の中に白い濁り(白内障)ができたり、目が赤く痛くなったり(ぶどう膜炎)します。エンセファリトゾーンは、ウサギさんの白内障の大きな原因の一つと言われています。
  • 腎臓の症状: あまり多くはありませんが、腎臓の機能が低下し(腎不全)、体重が減ったり、お水をたくさん飲んでおしっこがたくさん出たりすることもあります。腎臓に問題が出ると、残念ながら回復が難しくなるケースが多いです。

症状は、これらのうち一つだけが出ることもあれば、複数組み合わさって出ることもあります。ある日突然、症状が現れることが多いです。

診断は難しい?他の病気との区別も大事

エンセファリトゾーン症の確定診断(「絶対にこれだ!」と言い切ること)は、生きているウサギさんでは非常に難しいのが現状です。なぜなら、この病原体は細胞の中に隠れていて見つけにくいことや、感染していても無症状の子がとても多いからです。

血液検査でエンセファリトゾーンに対する抗体(過去に感染したことがあるかの証拠)を調べることはできます。しかし、抗体があっても症状が出ない子がたくさんいるため、「抗体がある=今出ている症状の原因はエンセファリトゾーンだ」とは断定できないのです。

そのため、獣医師はウサギさんの症状(特に神経症状や目の症状)を見て、他の可能性(例えば、斜頸や眼振は細菌性の内耳炎や中耳炎でも起こります。これらはパスツレラ菌などの細菌が原因です)を慎重に判断しながら、「エンセファリトゾーン症かもしれない」という可能性を考えて治療を進めることが多いです。レントゲンやCTなどの画像検査も診断の助けになります。

治療法は?早めの対応とウサギさん自身の力が鍵

残念ながら、エンセファリトゾーンを完全に体内からなくす確立された治療法はまだありません。

治療の中心となるのは、「フェンベンダゾール」というお薬です。これは寄生虫に効果があると言われているお薬で、エンセファリトゾーンの胞子が増えるのを抑える効果が期待されます。多くの場合、1ヶ月から2ヶ月ほど続けて投与します。

ただし、お薬だけで劇的に症状が良くなることは少なく、一番大切なのは、ウサギさん自身の体力と免疫力で病気を乗り越えるのをサポートすることです。

症状が出ている間のサポート(対症療法)が非常に重要です。

  • 点滴: ご飯や水が十分に取れない時は、脱水を防ぐために点滴をします。症状がひどい場合は、毎日通院して点滴が必要になることもあります。
  • 食事の介助: 食欲がない、あるいは首が傾いて食器までたどり着けない場合は、飼い主さんがシリンジ(注射器のようなもの)で流動食(牧草などを溶かしたもの)を与えたり、牧草を手に持って口元に運んであげたりします。特にウサギさんにとって、少しでも食べない時間が長いと胃腸の動きが止まって重篤な状態になりやすいため、食事のサポートは命綱です。
  • お薬: バランスを崩して転がるのを抑えるお薬、目の炎症を抑える目薬、他の細菌感染を併発している場合は抗生物質なども必要に応じて使われます。

治療で最も重要なのは、「できるだけ早く病院に連れて行くこと」です。斜頸などの神経症状は、発見が遅れると後遺症が残りやすくなります。人間が脳卒中になった時に一刻も早い処置が必要なのと同じで、ウサギさんの神経症状も時間が勝負です。「あれ?首が傾いているかな?」と思ったら、様子を見ずにすぐに動物病院を受診しましょう

多くのウサギさんは、適切な治療とサポートによって徐々に回復していきます。発症から数週間以内に回復する子もいます。ただし、首の傾きなど、症状が完全に消えず後遺症として残ることも少なくありません。しかし、ウサギさんは傾いた状態にも慣れて、上手に生活できるようになる子が多いので、諦めずにサポートしてあげてください。腎臓に問題が出ている場合は、残念ながら予後が厳しいことが多いです。

お家での看護の工夫

斜頸などの症状が出ている時は、ウサギさんが安全に過ごせるよう、お家でも工夫が必要です。

  • ケージ内の環境: 体のバランスを崩してケージの壁にぶつかってしまうことがあるので、段ボールやタオルなどを敷いて壁を保護してあげましょう。転がりがひどい場合は、一時的に狭い場所(キャリーなど)に移して体の動きを制限してあげると落ち着くこともあります。
  • 食べ物と水: 首が傾いていると、ボトル式の給水器や牧草フィーダーからうまく食べたり飲んだりするのが難しくなります。水は重くて安定したお皿に入れてあげたり、牧草は床に山盛りに置いてあげるなど、ウサギさんが楽な姿勢でアクセスできるように工夫しましょう。
  • トイレ: 段差のあるトイレは使いにくくなるので、平らなものを用意するか、吸収性のシートなどを敷いてあげるのも良い方法です。
  • 見守り: 心配で見守りたくなりますが、ウサギさんは見られていることがストレスになる場合もあります。自分で立ち上がれるようなら、ある程度はそっとしておいてあげる時間も大切です。

エンセファリトゾーン症の発症を予防するには?

すでに多くのウサギさんが感染している可能性が高いので、感染自体を完全に防ぐのは難しいのが現状です。予防の目標は、症状が出ないように、ウサギさんの免疫力を高く保つことです。

  • 健康的な生活: バランスの取れた食事(たっぷりの牧草!)を与え、適切な温度と湿度を保ち、ケージを清潔に保つこと。
  • ストレスを減らす: ウサギさんが安心できる環境を整え、急な環境の変化や大きな音、慣れない刺激を避けてあげましょう。
  • 他の病気の早期発見・治療: 隠れた病気(歯の病気、子宮の病気、腎臓病など)も免疫力低下の原因となります。定期的な健康診断で、他の病気を早期に発見し治療してあげることが、結果的にエンセファリトゾーン症の発症予防にもつながります。

これらを心がけることが、ウサギさんが健康で長生きするための一番の予防法と言えるでしょう。

最後に

エンセファリトゾーン症は、ウサギさんにとって身近で、獣医師にとっても診断や治療が難しい病気です。突然症状が出ると慌ててしまいますが、この病気のことを知り、異変に気づいたらすぐに動物病院に相談することが何より大切です。

そして、どんなに気をつけていても発症してしまうこともあります。もしウサギさんが病気になっても、それは飼い主さんの責任ではありませんので、ご自身を責めすぎないでくださいね。一緒に病気と向き合って、大切なウサギさんをサポートしていきましょう。

ご心配なことや気になる症状があれば、いつでもご相談ください。

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